ニチコンの公式サイトで型式を見ると、VSG3-666CN7 のあとに ES、EB、AS、AB…と8つ並んでいます。どれが自分の家に必要なのかは、仕様表を見ても分かりません。
どの型式になるかは、3つの質問で決まります。家が海のすぐ近くか、停電のとき家全体で使いたいか、色はシルバーかブロンズか。
値段のほうも気になると思います。カタログにあるのは本体価格だけなので、見積もりの総額が妥当かどうかは判断しづらいところです。
見積もりを本体・必ず買う部材・工事費の3つに分けると、前の2つは公開されている金額と照らせます。残るのは工事費だけです。
この記事では、次の順に整理します。
- いま新品で買えるのはどれか
- 工事込みでいくらかかるのか
- 自分の家ならどの型式になるのか
読み終えたときには、見積もりで指定する型式が1つに決まり、その金額の内訳も自分で確かめられるようになります。
型式がもう決まっている方は、ここから見積もりに進めます
エコ発電本舗はV2Hを扱う販売施工店です。無料見積りフォームで商品種別と機種まで指定できるので、工事費まで含めた金額を、1社ぶんですが具体的に受け取れます。
リンク先はトップページで、無料見積りフォームの「商品種別」で〈V2H〉を選べます。対応エリアは公式の会社概要で8地方46都道府県とされ、北海道は含まれません(2026年9月時点)。地域によっては提携する施工店が担当します。複数社を並べて比べたい場合は一括見積もりサービスの選び方もどうぞ。
この記事を書いた人
蓄電ラボ管理人
大手メーカーでリチウムイオン電池の開発に長年従事。さまざまな機器の電池設計・評価で培った知見をもとに、家庭用蓄電池と太陽光発電の経済性を中立的な立場で解説しています。

いま買えるのはどれか
ニチコンのV2H「EVパワー・ステーション」で、いま新品として選べるのは VSG3-666CN7 という1シリーズです。末尾2文字が違う8つの型式に分かれています。
| 型式 | 自動切替開閉器 | 塩害の区分 | 色 | 希望小売価格(税抜) |
|---|---|---|---|---|
| VSG3-666CN7 ES/EB | なし | 標準 | シルバー/ブロンズ | 120万円 |
| VSG3-666CN7 AS/AB | あり | 標準 | シルバー/ブロンズ | 128万円 |
| VSG3-666CN7 FS/FB | なし | 重塩害 | シルバー/ブロンズ | 132万円 |
| VSG3-666CN7 HS/HB | あり | 重塩害 | シルバー/ブロンズ | 140万円 |
※ニチコン公式サイトの希望小売価格(2026年9月時点・税抜・工事費別)。末尾の S=シルバー、B=ブロンズ。
表を縦に見ると、8つあっても違いは3つだけだと分かります。
- 自動切替開閉器の有無あり/なしで 8万円の差
- 塩害の区分標準/重塩害で 12万円の差
- プラグホルダの色シルバー/ブロンズで 0円(価格は同じ)
色は価格に影響しません。実質的に決めるのは、開閉器と塩害の2つだけです。
蓄電ラボ管理人販売店によっては、2026年2月に生産が終わった旧モデル(VCG・プレミアムモデル)の在庫を勧められることがあります。選ぶこと自体は問題ありませんが、下の3点だけは確認してください。
- 保証期間旧モデルは5年、現行は10年
- 停電時の切り替え旧モデルは手動、現行は自動で数秒で復電
- 塩害地への設置旧スタンダードは不可、現行は型式(F・H)を選べば対応
そもそもV2Hを入れるべきかどうかで迷っている段階なら、先にこちらを読んだほうが早いかもしれません(→ V2Hのデメリット5選|やめたほうがいい人・向いている人の特徴)。
EVをまだ持っておらず蓄電池と迷っている場合は、比較記事のほうが向いています(→ V2Hと蓄電池はどっちがいい?EVがあれば蓄電池はいらないのか)。
蓄電池も一緒に入れるつもりなら、V2Hを単体で足すか、パワコンごと1台にまとめるかで総額が変わります(→ V2Hと蓄電池を併用するなら単機能型か一体型か|パワコンの数と価格差で決まる)。
メーカーをまだ決めていない段階なら、先に候補を減らすほうが早いかもしれません。太陽光があるか、いまのパワコンを替えるか、蓄電池も一緒に入れるかで、残るメーカーは4〜5社まで落ちます(→ V2Hのメーカーはどこがいい?家の条件で候補を絞る比較)。
いくらかかるのか
ここがこの記事でいちばん誤解の多いところです。V2Hは本体を買っただけでは動きません。
先に目安を示します。
- 本体の希望小売価格税抜 120万〜140万円(8型式)
- 本体だけの実売定価の 2〜2.5割引あたりが目安
- 工事込みの総額おおむね 150万〜180万円
- ※2026年9月時点。販売店・時期・工事の条件で変わります。総額を動かすのは本体価格ではなく工事費です
検索で89.8万円という数字を見かけた場合、それは生産終了した旧モデルの価格です。いま新品で買える機種の価格ではありません。
総額の出どころ
金額の幅が大きいので、どこの数字かを示します。
| 出典 | 立場 | 工事込みの総額 |
|---|---|---|
| 東京電力エナジーパートナー「EV DAYS」 | 電力会社(販売店ではない) | 160万〜180万円 |
| エコでんち | 販売店 | 165万円〜 |
| エコ発電本舗 | 販売店 | 150万〜165万円 |
| 住宅用V2H.com | 情報サイト | 本体128万円〜+工事25万〜40万円 |
※いずれも各社が公開している金額を2026年9月に確認したもので、当サイトが見積もりを取って確かめた額ではありません。
いちばん立場が中立なのは東京電力エナジーパートナーです。V2Hを売っている会社ではないため、ここが出している160万〜180万円が相場の目安になります。
本体は値引きされます。それでも総額は下がりません
「希望小売価格は値引き前の額なのでは」という疑問はもっともです。実際、本体は値引きされています。
通信販売では、定価の2〜2.5割引あたりで本体が出ています。シンセラティー住設は「定価の25%オフ」と明記しています。
※価格.comの掲載一覧と通販ページの表示額を2026年9月に確認し、税込の希望小売価格と比べた割引率です。型式と店によって幅があります。
ではなぜ総額が150万円を下回らないのか。値引きが効くのは本体だけで、部材と工事は実費だからです。
V2Hの値段は、本体価格では決まらない
※工事込みの総額に占めるおおよその割合です。本体は通販の実売、必須部材はメーカーの希望小売価格、工事費は販売店と電力会社が公開している目安から計算しました。工事の条件で大きく動きます。
本体を最安で買っても、部材と工事を足すと総額はやはり150万円前後になります。値引きが効くのは全体の一部だけ、と考えておくと見積もりを読み違えません。
本体のほかに「必ず買うもの」があります
ニチコンの公式カタログには、本体システム表のすぐ下に一文が書かれています。
必須オプション(施工ケーブルセット、設置部材セットから、各1つずつ選択ください)
ニチコン「汎用総合カタログ」(V2H充放電システム)
つまり本体とは別に、2種類の部材を必ず1つずつ選ぶ必要があります。
| 必須の部材 | 選択肢 | 希望小売価格(税抜) |
|---|---|---|
| 施工ケーブルセット | 7種類(配線の長さ違い) | 7.3万〜16.2万円 |
| 設置部材セット | 4種類(壁掛け/ポールなど) | 6.25万〜12.05万円 |
| 合計 | 13.55万〜28.25万円 |
※同じニチコン「汎用総合カタログ」の希望小売価格(2026年9月に確認・税抜)。どれを選ぶかは配線の長さと設置方法で決まります。
この金額は販売店側の説明とも一致します。スマートリハウスは「必須部材セットは約15万〜26万円、ポール設置なら約10万円追加」と書いています。
施工業者のタケモトデンキも「V2H本体以外のCTなどの付属品はすべて追加」「カタログに載っているのは定価だけ」と説明しています。
※スマートリハウスとタケモトデンキの各社ページの記載を2026年9月に確認したものです。タケモトデンキの記事は2021年7月公開で、旧モデル(VCG)世代の内容です。
メーカー・販売店・施工業者の3方向が同じことを言っているので、ここは見積もりでも動きません。
補助金については、型式ごとに交付の上限額が違います。金額の計算方法と申請の順番は別の記事にまとめています(→ 【2026年版】V2Hの補助金はいくら?最大130万円の内訳と機種別の上限額)。
なお国のCEV補助金は、2026年度分の受付が2026年8月27日到着分で終了しています。
見積もりで本当に分からないのは「工事費」だけです
「ネットでは分からないから見積もりを取ってください」と書かれた記事をよく見かけますが、実際には分かるものと分からないものがはっきり分かれています。
| ネットで分かるか | |
|---|---|
| 本体価格 | 分かる(通販で実際に買える額が出ている) |
| 必須部材 | 幅なら分かる(カタログに定価がある) |
| 工事費 | 分からない(現地の条件で変わる) |
総額が150万円に寄るか180万円に寄るかを決めているのは、工事費です。そして工事費を動かす条件は、見積もりを取る前に自分で確かめられます。
- 駐車場から分電盤までの距離配線が長いほど施工ケーブルセットの等級が上がります(最長50m)
- 本体をどこに付けるか壁掛けか、ポールを立てるか。ポールは約10万円の追加になります
- 契約アンペア主幹ブレーカの容量によっては追加工事が必要になります
- 停電のときに動かしたい機器井戸ポンプやホームエレベータは別回路にする判断が要ります
この4つをメモしてから見積もりを取ると、返ってきた金額の差がどこから来ているのかを読めるようになります。



見積書は「本体いくら」ではなく「本体・部材・工事の3つに分けて」出してもらってください。分かれていないと、他社と比べようがありません。
どれを選べばいいのか
ここまでの内容を使うと、型式は上から順に答えるだけで決まります。8つのうち、あなたが選ぶのは1つだけです。
あなたの家だと、8型式のどれか
| 設置する場所海から離れた地域 | 設置する場所海のすぐ近く(重塩害) | |
|---|---|---|
| 停電のとき一部だけでよい | ES / EB8つの中でいちばん基本の型。価格も最も低い | FS / FB重塩害仕様。海沿いはここから選ぶ |
| 停電のとき家全体で使いたい | AS / AB開閉器つき。全負荷対応分電盤が要らない | HS / HB開閉器つきの重塩害仕様。価格は最も高い |
※末尾の S=シルバー、B=ブロンズで、色による価格差はありません。施工ケーブルセットと設置部材セットは、この4通りとは別に配線の長さと設置方法で選びます。
- 海の近くですか重塩害の地域なら F または H(+12万円)。地域の区分はニチコンのサイトで確認できます
- 停電のときに家全体で使いたいですか使いたいなら自動切替開閉器つき(A または H)(+8万円)
- 色はどちらにしますかシルバー(S)とブロンズ(B)で価格は同じです
- 本体をどう設置しますか壁掛けかポールかで設置部材セットが変わります
- 駐車場から分電盤まで何メートルですか距離で施工ケーブルセットが変わります
質問1から3までで型式が決まり、質問4と5で部材が決まります。
自動切替開閉器は「+8万円で工事費が下がる」という選択です
迷いやすいのが2つめです。自動切替開閉器は8万円の追加ですが、そのぶん別の費用が減ります。
ニチコン公式は「全負荷対応分電盤が不要になり、工事費の削減に貢献」と書いています。つまり開閉器を付けるか、分電盤側を工事するかの比較になります。



停電時に家全体で使いたいかどうかで決まります。冷蔵庫と照明とスマホの充電だけで足りるなら、開閉器なし(E・F)でも困りません。
- 海水のしぶきが直接かかる場所には、重塩害仕様でも設置できません
- 岩礁に隣接する土地・離島も対象外です
- 温泉のように腐食性のガスが出る環境も設置できません
海の近くの場合は、地域区分だけでなく設置場所そのものを施工店に見てもらってください。
パナソニックと迷っている場合、分かれ目はあとから蓄電池を足す前提かどうかです。
ニチコンのVSG3はV2H単体の製品なので、型式が決まればそこで完結します。パナソニックの eneplat はパワーステーションという土台にユニットを足していく形なので、先に土台と蓄電池だけを入れて、V2Hスタンドを後から足す組み方もできます(→ パナソニックのV2Hはどれを選ぶ?eneplat の構成とユニットの選び方)。
デンソーと迷っている場合、分かれ目は保証の年数が型式で分かれるかどうかです。ニチコンのVSG3は8型式とも10年(室内リモコンは5年)ですが、デンソーは3型式のうちSDシリーズが10年、Dシリーズが5年です(いずれも一般住宅向け)。デンソーの10年も、ニチコンと同じく書類の提出が条件になります(→ デンソーのV2Hはどれを選ぶ?3型式の違いと必須オプション込みの総額)。
オムロンと迷っている場合、分かれ目はいまの太陽光パワコンを替えるかどうかです。ニチコンのVSG3はV2H単体なので、いまのパワコンはそのまま残ります。オムロンには太陽光パワコンごと置き換えるハイブリッドV2Xがあり、設置から10〜15年という更新の時期に来ているなら、そちらも選択肢に入ります(→ オムロンのV2Hはどれを選ぶ?マルチV2X 10セットの違いと工事込みの総額)。
長州産業と迷っている場合、分かれ目は太陽光もこれから一緒に入れるかです。ニチコンのVSG3はV2Hだけを足す製品ですが、長州産業のスマートPVエボは太陽光・蓄電池・V2Hを1台のパワコンでまとめる構成で、蓄電池の容量を選ぶとV2Hスタンドと分電盤の型式まで決まります(→ 長州産業のV2Hはどれを選ぶ?2製品の違いと対応車種・総額の内訳)。
型式が決まったら、その型式を指定して金額を聞きます
エコ発電本舗の無料見積りフォームは、商品種別で〈V2H〉、機種で〈VSG3-666CN7〉まで選べます。型式を指定して聞けるので、返ってきた金額を本体・部材・工事に分けて読めます。
リンク先はトップページで、無料見積りフォームの「商品種別」で〈V2H〉を選べます。対応エリアは公式の会社概要で8地方46都道府県とされ、北海道は含まれません(2026年9月時点)。地域によっては提携する施工店が担当します。
1社の金額だけでは、それが高いのか安いのかは分かりません
複数社を並べて相場そのものを確かめたいときは、一括見積もりのほうが向いています。グリエネは製品カテゴリに「蓄電池・V2H」がある一括見積もりサービスです(2026年9月時点)。
運営の窓口が先に希望を聞くので、申し込んだ直後に何社からも一斉に電話が来る仕組みではありません。機種の希望も、そのときに伝えます。
グリエネの提携施工店は全国450社です。ほかのサービスとも比べるなら見積もりサイト4社の比較をどうぞ。
見積もり先の評判が気になる場合は、こちらもあわせてどうぞ(→ エコ発電本舗の評判・口コミは?クチコミ483件の星を数えて分かったこと)。
自分の車で使えるのか
ニチコンは対応車種の一覧を公式サイトで公開しています。ただしメーカーごとに更新の基準日が違うので、一覧は「その日までに確認できたもの」です。
主なところを挙げます。
| メーカー | 対応車種(抜粋) |
|---|---|
| 日産 | リーフ、アリア、サクラ、e-NV200、クリッパーEV |
| 三菱 | アウトランダーPHEV、エクリプスクロスPHEV、eKクロス EV、ミニキャブ EV ほか |
| トヨタ | プリウスPHV、bZ4X、RAV4 Z、アルファードPHEV、クラウン SPORT RS ほか |
| レクサス | RZ600e、RZ450e、UX300e ほか |
| ホンダ | Honda e、N-VAN e:、N-ONE e:、CR-V e:FCEV ほか |
| マツダ | MX-30 EV MODEL、CX-60 PHEV、CX-80 PHEV ほか |
※2026年9月時点のニチコン公式一覧より抜粋。全車種は公式ページで確認してください。
「載っていない=使えない」とは限りません
見落とされがちなのですが、この一覧は基準日がメーカーごとにばらばらです。
トヨタ 2026年6月現在/ホンダ 2026年6月現在/日産 2026年3月現在/メルセデス・ベンツ 2026年4月現在/マツダ 2025年4月現在/三菱 2025年8月現在
マツダは1年以上前の情報です。つまり一覧に無い車種は、使えないのではなく「確認結果がまだ公表されていない」だけの可能性があります。気になる車種があれば、車のメーカーとニチコンの両方に問い合わせるのが確実です。
車のほうにも条件があります
V2Hが動くかどうかは、充放電器だけでは決まりません。車両側にも条件があります。
- エンジンがかかっていると充放電できません(三菱・トヨタのPHEV)
- 車種によっては、2週間に1回程度は普通充電で満充電にする必要があります
- 停電時の自立運転を始めるのに、DC12Vの電源ケーブルが必要な車両があります
- 充電が約2kW以下・放電が約1kW以下になると、車両側から停止を求めてくる場合があります(メルセデス・ベンツ)
契約アンペアも先に確認してください
倍速充電を本来の速さで使うなら、契約電力60A以上が推奨されています(ニチコン公式)。
さらに取扱説明書では、契約容量18kVA以上・主幹ブレーカ90A以上になる場合は追加の工事が必要とされています。ブレーカの容量を変えると、V2H側の設定変更も必要になります。



「うちのアンペアで足りるのかな」と思ったら、分電盤のいちばん左にあるブレーカの数字を見てください。そこが契約容量です。


EVバッテリーの寿命と劣化がわかる本
長持ちさせる10の習慣
同じEVでも、乗り方しだいで電池の減り方は変わります。今日から変えられることと、その裏にある電池の仕組みを一冊にまとめました。
思ったとおりに動かないのはどんなときか
ここからは、買ったあとに「そうなの?」となりやすいところを、仕組みから説明します。どれも故障ではなく、そう作られています。
「6kW」は上限ではなく設計目標の数字です
公式カタログの定格表記は「6kW未満」です。「6kW」ではありません。
もともと6kWという数字は、200Vコンセントでの普通充電(3kW)のちょうど2倍という設計目標から来ています。「倍速充電」という呼び名の由来もここです。
実際の定格は5.9kWで、公的な機器登録リストにも5.9kWと記載されています。
公式も注記で「機器の入力値であり、実際の充電出力を保証している数値ではありません」と書いています。
- 契約電力に合わせて充電を絞る制御が働いたとき
- 車の充電率が上限または下限に近いとき
- HEMSから指示が出ているとき
- 日射や気温で本体の内部が高温になったとき
- 太陽光の発電量が落ちたとき(余剰電力で充電している場合)
なお、充電の速さを「kWh」という単位で書いている解説を見かけることがあります。kWhは電気の量の単位で、速さの単位はkWです。単位が違うと比較になりませんので、見積書やカタログを読むときは注意してください。
高温になると出力を絞るのは、壊さないためです
上の4番は、設置場所選びに直結します。
半導体には接合部の温度に上限があり、それを超えると壊れます。そこで手前で出力を絞って温度を下げるのが、電力変換機器では標準的な保護のしかたです(サーマルディレーティング)。
もうひとつ、電解コンデンサの寿命は温度に強く左右されます。アレニウスの法則に基づく経験則として、温度が10℃上がると寿命はおよそ半分になるとされています。
ニチコンはもともとコンデンサのメーカーです。温度を抑えて部品を長持ちさせる設計は、この会社の本業そのものと言えます。
公式も「直射日光が当たらない場所への設置を推奨」と明記しています。夏の午後に西日が当たる壁に付けると、いちばん使いたい時間帯に出力が落ちることになります。


設置場所は、見た目や配線の都合だけで決めないほうがいいところです。
満充電にならないのは、電池を守るためです
取扱説明書を見ると、【充電停止充電率】の初期値は90%に設定されています。何もしなければ、満充電にはなりません。
理由は電池の側にあります。リチウムイオン電池は満充電に近い状態で正極の電位が高くなり、電解液の分解や被膜の成長が進みやすくなります。高い充電率で置いておく時間が長いほど、劣化は速く進みます。
V2Hは毎日充放電し、しかも「いつでも放電できるように」高い充電率で置いておく時間が長くなりがちです。電池にとってはかなり厳しい使い方なので、メーカーが上限を切っているわけです。
グリーンタイマーを使う場合は最大99%まで設定できます。「明日は遠出する」というときだけ上げて、普段は初期値のままにしておく——そういう使い分けを想定した作りになっています。
停電時に使えない家電があるのは、片側の容量で決まるからです
停電時の出力は6kVA未満ですが、注意したいのは片相あたり3kVA未満という点です。
家庭の100Vの回路は2系統に分かれています。合計では足りていても、片側だけ先に足りなくなることがあります。
公式は、停電時に使えないことがある機器として、温水便座・家庭用エレベータ・井戸水ポンプ・レーザープリンタなどを挙げています。



この4つには共通点があります。モーターとヒーターです。どちらも動き始めの一瞬に、定格の何倍もの電流が流れます。
施工業者のタケモトデンキも「ホームエレベーターや井戸ポンプはV2Hの回路とは別回路に」と説明しています。取扱説明書に並んでいる「使えない機器リスト」の正体は、この起動時の電流です。
効率がカタログどおりに出ない理由は、1つの数字で説明がつきます
「カタログでは91%なのに、実際は60〜70%しかない」という声があります。一方でメーカーは94%と書いています。どちらかが嘘をついているように見えますが、そうではありません。
電力変換器の損失は、2種類に分かれます。
- 出力に比例して増える損失(導通損)たくさん流すほど増える
- 出力に関係なくかかる損失(固定損)スイッチング損・制御回路・冷却ファンなど。少ししか使わなくても消えない
ポイントは後者です。固定損は放電量が小さくても減らないので、少ししか放電していないときほど、損失の「割合」が跳ね上がります。
ある家庭が公開している実測レポートでは、放電時のロスがおおむね数百W(1軒の実測で約466W)でした。この値を固定分とみなして計算すると、こうなります。
この図を見ると、カタログの94%も、口コミの「実測60〜70%」も、どちらも正しいことが分かります。同じ機械を、違う使い方で測っているだけです。
- まとめて大きく使う時間帯に放電するほど、効率は上がります
- 逆に、夜通し少しずつ流し続ける使い方がいちばん損をします
- エアコンや調理で電気を多く使う時間帯に放電を寄せるのが、機械の性格に合った使い方です
なお、実際に「何年で元が取れるのか」という計算は、電気料金プランや使い方で大きく変わります。
そちらは別の記事で扱っています(→ V2Hは何年で元が取れる?設置費用100万〜300万円の回収シミュレーション【2026年版】)。
実際に使っている人の声
ここまでは公式資料からの説明でした。実際に使った人がつまずいたのは、どれもカタログに書かれていないところでした。
現行のVSG3は2024年発売で、使用者が公開している記録はまだ多くありません。ここでは現行モデルの利用者2名の記録と、旧モデル(VCG)での詳しい実測を合わせて読みます。機種が違うものは、そのつど断りを入れます。
現行モデルを使っている人の記録は、まだ数えるほどです
現行モデルの使用者が公開している記録は、いま2件見つかります。
| 車種・型式 | 公開されている記録の中身 |
|---|---|
| 日産リーフ VSG3-666CN7 | パーツレビュー。5段階の最高評価。「天気が良い日は、昼間にゆっくり充電。その分の電力を夕方から翌朝までに使い切るようなサイクルです」 |
| マツダCX-60 PHEV VSG3-666CN7AS | 整備手帳。9か月ぶんの充電量と電費を記録。設置のしかたと自己負担額の記載あり |
※出典=みんカラ パーツレビュー/みんカラ 整備手帳(いずれも2026年9月に確認)。
2件目で目を引くのは設置のしかたです。屋外の壁掛けにしたうえで、耐久性を勘案して同時に庇を設置したと書かれています。前の章で見た「直射日光を避ける」という公式の推奨を、実際に工事で形にした例です。
費用も書かれていて、補助金を相殺したあとの、工事を含む自己負担が約132万円でした。補助金を引く前の金額ではないので、この記事で挙げた相場(150万〜180万円)とは前提が違います。
放電中に、少しだけ電気を買い続けます
ここからは旧モデルでの実測です。ある実測レポートでは、放電している間、常に約50Wの買電が発生することが報告されています。筆者は「マニュアルには記載されておらず、使ってみないと気づかない仕様」と書いています。
これは不具合ではありません。V2Hは電気が系統側へ逆流しないように、常にわずかに買う向きで制御しています。ゼロを狙うと逆流してしまうため、少し買う側に寄せてあるわけです。



完全に電力会社から切り離して暮らす、いわゆるオフグリッドを目指す方には、ここが効いてきます。同じレポートの筆者も「V2Hを使う限りオフグリッドは難しい」と結論づけています。
車種によっては、うまく動かないことがあります
価格.comの掲示板では、メルセデス・ベンツ GLC 350e との組み合わせで、次のような報告が出ています。
- コネクタのロックが作動しない
- 充電電流が15A以下に制限される
- 100%充電のあと、放電を開始できない
これは公式の注記と一致しています。前の章で触れたとおり、メルセデスは「充電が約2kW以下・放電が約1kW以下になると車両側から停止を求める」とされています。
カタログに書いてある条件が、そのまま実際の症状として現れているわけです。
アプリでは細かい数値まで見られません
同じレポートでは、「スマホアプリはグラフのみで正確な数値は見られず、データを外部に抜き出すこともできない」とも書かれています。自分で細かく検証したい方には物足りない部分です。
評価されている点
- 世界で最初にV2Hを製品化したメーカーという実績
- 200Vの普通充電と比べて約2倍の速さで充電できる
- 現行のVSG3は停電時に自動で切り替わり、数秒で復電する(旧モデルは手動でした)
- 現行モデルの利用者からは、昼に充電して夕方から朝まで使い切る運用ができたという報告がある
なお、同じニチコンでも蓄電池(トライブリッド)の評判は別の話になります。そちらは専用の記事にまとめています(→ ニチコン蓄電池の口コミ・評判は?「やばい」の真相をエンジニアが検証)。
買ったあとの10年はどうなるか
最後に、買ったあとの話を短く整理します。保証は10年ですが、書類が出ていることが条件です。
保証の条件
VSG3の保証期間は10年(室内リモコンは5年)です。旧モデルの5年から倍に伸びています。
ただし公式の注記に条件があります。「事前確認書」「設置完了報告書」が提出された場合の期間、と書かれています。



施工店に確認することは1つだけです。「事前確認書と設置完了報告書は出してもらえますか」。これを聞いておけば、保証の入口でつまずくことはありません。
点検は使う人の役目です
取扱説明書では、日常点検は使用者が行うものとされています。
- 本体の異常・破損・腐食・錆がないか
- ネジのゆるみ、アンカーボルトのゆるみ
- 吸気口・排気口がふさがっていないか(落雪で放熱口を塞がないこと)
- 本体の周りにスペースが確保されているか(狭いと寿命が短くなる可能性があると明記されています)
1回使うと交換になる操作があります
覚えておきたいのが緊急離脱です。充電中にどうしても車を動かさなければならないときに使う機構ですが、1回使うと充放電コネクタは以後使用できなくなります。
復旧にはニチコンによる点検と内部スイッチの機能回復が必要で、保証期間中でも、不具合以外の要因なら費用は利用者の負担とされています。
待機電力は年間4,000円前後
待機電力は15W以下とされています。上限の15Wで計算すると、年間およそ131kWh、電気代にして年4,100円前後です(1kWhあたり31円で計算)。
「以下」という表記なので、これは上限側の見積もりです。実際にはこれより小さくなります。
なお保証や仕様の条件は変わることがあります。契約前には必ずニチコンの公式サイトと、最新の取扱説明書で確認してください。
保証の条件も、見積もりの段階で確かめられます
「事前確認書と設置完了報告書を出してもらえるか」は、契約前に聞いておく項目です。見積もりを依頼するときに、型式と一緒に伝えておくと確認が早く済みます。
リンク先はトップページで、無料見積りフォームの「商品種別」で〈V2H〉を選べます。対応エリアは公式の会社概要で8地方46都道府県とされ、北海道は含まれません(2026年9月時点)。地域によっては提携する施工店が担当します。
よくある質問
本体の希望小売価格は税抜120万〜140万円(8型式)です。ただし本体だけでは動かず、必須の部材(税抜13.55万〜28.25万円)と工事費が別に必要です。工事込みの総額は、2026年9月時点でおおむね150万〜180万円が目安になります。
日産・三菱・トヨタ・レクサス・ホンダ・マツダなど、CHAdeMO規格の多くのEV・PHEVに対応しています。ただし公式一覧は基準日がメーカーごとに違うため、一覧に無くても使えない確定ではありません。車のメーカーにも確認してください。
Vehicle to Home の略で、EVにためた電気を家庭で使えるようにする設備です。車から家へ電気を戻せる点が、充電だけの普通充電器との違いです。導入すべきかどうかの判断材料は、デメリット記事のほうで詳しく扱っています。
ニチコンのVSG3は保証期間が10年(室内リモコンは5年)です。ただし保証は「事前確認書」「設置完了報告書」が提出された場合の期間とされています。実際の寿命は設置場所の温度環境にも左右されるため、直射日光が当たらない場所への設置が推奨されています。
まとめ
- いま新品で買えるのはVSG3の8型式(税抜120万〜140万円)。違いは自動切替開閉器で8万円、重塩害仕様で12万円、色は0円の3つだけ
- 本体だけでは動きません。必須の部材(税抜13.55万〜28.25万円)と工事費が必ず加わり、工事込みの総額はおおむね150万〜180万円(2026年9月時点の目安)
- 本体は値引きされますが、部材と工事は実費なので総額はあまり下がりません
- 型式は海からの距離と、停電時に家全体を使いたいかの2つで決まります
- 6kW未満・充電上限90%・停電時は片相3kVA未満——どれも故障ではなく仕様です
見積もりを取る前に、駐車場から分電盤までの距離・本体の設置場所・契約アンペア・停電時に動かしたい機器の4つをメモしておいてください。
この4つが決まっていると、見積書の金額差がどこから来ているのかを自分で読めるようになります。
- ✓型式まで指定して聞けるので、返ってきた金額を本体・部材・工事に分けて読める
- ✓見積もりは無料。相場を知るだけの利用でも問題ありません
- ✓工事費は現地の条件で動くため、ネットの相場だけでは決まりません
型式が決まったら、あとは金額を確かめるだけです
型式を指定して1社から具体的な金額をもらうか、複数社を並べて相場そのものを確かめるか。どちらから始めても、この記事の4つのメモがあれば見積書を読み解けます。
リンク先はトップページで、無料見積りフォームの「商品種別」で〈V2H〉を選べます。対応エリアは公式の会社概要で8地方46都道府県とされ、北海道は含まれません(2026年9月時点)。地域によっては提携する施工店が担当します。北海道の方や、複数社を並べたい方はグリエネをどうぞ。グリエネは全国450社と提携する一括見積もりサービスで、蓄電池・V2Hも対象です(機種の希望は申し込み後のヒアリングで伝えます/→ グリエネの評判・断り方)。エコ発電本舗の評判はクチコミ483件を数えた記事にまとめています。
- V2Hは何年で元が取れる?設置費用100万〜300万円の回収シミュレーション【2026年版】総額が決まったあとの回収年数
- 【2026年版】V2Hの補助金はいくら?最大130万円の内訳と機種別の上限額型式ごとの交付上限額
- V2Hのデメリット5選|やめたほうがいい人・向いている人の特徴導入そのものを迷っている場合


家庭用蓄電池を入れるかどうか、判断の順番を本にまとめました
同じ蓄電池でも、得する家と損する家に分かれます。
①我が家に向くか②何年で取り返せるか③どのメーカーを選ぶか④この見積書で契約していいか
4ステップで入れる・やめるを中立に判断し、納得して決められる一冊です。






